山本商会新宿営業所

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建材商社の営業所ビルの新築計画。

クライアントは主に副資材を建設現場に供給する企業で、商材の特性上、現場で必要になったモノを迅速に配送できることを強みとしている。その機動力を維持・向上させるため、再開発現場へのアクセスにも優れた立地条件を持つ、旧新宿営業所の建替えが必要になった。
敷地は諏訪通り・私道と見紛うような行き止まりの区道・小学校に囲まれた三角形である。また西から東に向かって1/8勾配程度の下り坂となっている。倉庫として効率的な棚の配置・可能な限りの広さが求められたので、道路境界線に寄せて建築面積上限での平面計画を選択した。
1階には車両の出入りが必要であり、歩道切下可能範囲から縦動線の位置は北西と決まった。5階建なので通常避難階段が必要になるが、100㎡ごとの防火区画により緩和してEVホールと一体の直通階段とすることで、スパンドレルのないカーテンウォールを実現した。
倉庫階で1,000kg/㎡の荷重条件・車両出入りに支障のない1階の間取り・軟弱地盤などの条件から、当初より鉄骨造で計画した。非整形かつ狭小な敷地で、車両の出入りや効率的な棚の配置の要求に応えるため、柱の配置は慎重に検討した。ラーメンで成立する架構だが、荷重条件から柱梁サイズが過大となったので、動線上影響が小さい柱間に座屈拘束ブレースを配置し、部材メンバーを抑えた。座屈拘束ブレースに地震力の大半を負担させる一方で、北東側に中間梁を含めたフィーレンデールを配置することで、偏心を抑えた。
1階北東は安全条例により交差点沿いは隅切り形状となり、5階は斜線制限回避のセットバックが必要だったので、2階~4階をオーバーハングさせた。倉庫の有効面積確保のため、当該部分の外壁にはECPを用いた。北東鋭角コーナーはデッドスペースになるので外部空間の設置を検討したが、周囲が共同住宅なので近隣関係に配慮して型ガラスの開口部を設け、コーナーを尖らせる意匠とした。避難階段免除区画の面積調整を兼ねて、サッシにアルミパネルの抱きをつくることで外観のアクセントとした。このように要素が混在する外観ではあるが、コーナー・見切納まり、目地の割付、配色、フラットなテクスチャによる調和を目指した。
共用部内装においては、耐火被覆が必要ない構造部材をコーポレートカラー【黄色】【水色】で着色することで、立体構成を視覚的に強調することを意図した。

設計監理:KOKO+ inc.
構造設計:円酒構造設計
設備設計:EOS plus
施工  :大成建設
設計期間:2020年3月-2021年8月
工事期間:2021年9月-2022年9月
計画地 :東京都新宿区
規模構造:鉄骨造 地上5階
主要用途:自家用倉庫
延床面積:697.18㎡